優しい音を奏でて…

満場の拍手をいただいて、控え室に戻ると、再びワンピースに袖を通して、ゆうくんの席へと戻る。


「お待たせ。」

「うん。
何飲む?」

ゆうくんの目が優しくて、なんだか照れてしまう。

「んー、じゃあ、モスコミュール。」

ゆうくんが自分の分と一緒にオーダーしてくれた。

カクテルが届いて、2人で乾杯する。

「奏。」

ゆうくんは、ジャケットの内ポケットから、細長い箱を取り出した。

「クリスマスプレゼント。
もらって。」

「ごめん。
私、何がいいか分からなくて、プレゼント
用意してないの。
ほんとにごめん。」

私が頭を下げると、

「そんなの気にしてないから、いいよ。
それより、開けてみて。」

「うん。ありがと。」

ゆうくんに促されて、シルバーのラッピングを開くと、中からは、真っ白いベルベットの箱。

開けると、そこには、シルバーのチェーンにト音記号をモチーフにしたペンダントトップがついたネックレスが。

そして、ト音記号の先にはキラキラ輝く透明な石。

「かわいい〜♡
すっごく嬉しい!!!」

今すぐにでも着けたい気分。
でも………

「でも、これ、もしかして、ダイヤじゃない?
こんな高価な物、もらえないよ。」

「返されても困るから、もらって。
俺がこんなのぶら下げてたら、変だろ?」

と言って、ゆうくんが笑うから、私の心も少し軽くなった。

「じゃあ、お言葉に甘えて。
ほんとにありがとね。」

ゆうくんは、黙って微笑んでいる。

「ねえ、今、着けてみていい?」

と私が聞くと、

「あぁ。
着けてやるよ。」

と言って、ネックレスを取り、私の背後に立った。

首元をゆうくんの手がなぞると、心臓が壊れそうなほどドキドキした。

「はい。」

そう言って、ゆうくんの手が離れていくと、今度は少し寂しくなった。

「ゆうくんは、何が欲しい?
今度、一緒に買いに行こ。」

と私が言うと、

「ん、欲しいものは買えないから。」

と答えた。

昼間の葵ちゃんの言葉を思い出した私は、一人で真っ赤になって俯いてしまった。


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