ライアー
「如月、今一人営業が来た。俺今から一件外せないのが入っているから、お前代わりに話聞いといてくれないか。」
荒々しい部長の命令に聞こえないほど小さなため息をつく。こういう小さな用件がちょいちょい入ってくるから自分の仕事が全然進まない。
上からはこき使われるし、さらに下も増えてきてここ最近の仕事量は増えてばっかだ。
俺が誰かに頼ればいいこともプライドのせいで自分で何とかしようとしてしまうせいもあるかもしれないけど。
無理って言えない自分はただの八方美人なんだと思う。
「お待たせいたしました。」
部長の代わりに自分が出る旨を伝えても、相手は嫌な顔一つせずうさんくさいほどさわやかな笑みでこっちを見返してきた。
「東 光彦と申します。」
名刺とともに告げられた名前に聴き覚えがあって思わず顔を見てしまった。
しかし、顔を見ても別にどこかであったような感じもない。
営業職柄か聞いたことあるような名前はどんな人物だったのか思い出せるまでずっと気になってしまって
それが高木詩乃の片思いの相手だと判明したとたん、くだらなすぎて笑いそうになった。
「失礼ですが、………という会社とも取引なさってますか?」
「よくご存じですね!そうなんです。大変お世話になっております。」
やっぱりだ。間違いなくこいつだ。
確かに人がいい感じがするし、スタイルもよく女子の食いつきそうな見た目をしている。
高木詩乃が述べた特徴と照らし合わせながらみてみると
いかに高木詩乃が脳内お花畑で妄想女子かが分かった。