ライアー
「は?合コンじゃねーのかよ。」

簾で区切られたスペースに案内された時点でちょっと狭くねーかとは思ってたけど、目の前の空席は2つ。
これじゃあ、思い描いてた合コン違う。戸惑いと苛立ちが増す。

「合コンですよ!やめてくださいよ、ここで帰るなんて!」
俺の気持ちを察したのか矢継ぎ早に言葉を出す。

気持ち的には人数合わせのつもりだったのに、
あいつが射止めたいオンナがいるってことは、必然的にもう1人をずっと相手にしなきゃいけないってことになる。

「帰りはしない。」

「それだけじゃダメです!ちゃんと話してください!営業だと思って!!」


「なんでここまできて仕事しなきゃなんねーんだよ。残業代請求するぞ。」

ワタワタした顔が面白くてしばらくいじめてたが、それにも飽きた頃にやってきた。


「すみません。お待たせしちゃって!」

鈴が鳴るような声ってこんな声のことを言うのかね、なんて思いながら振り返ると声にぴったりのかわいらしー見た目のオンナらがいた。


「いいよーいいよー全然待ってないし」

顔をデレデレにしながら、成瀬が席につくように促す。


「この人がこないだ話した如月先輩ね!
うちの会社きっての色男!
それだけじゃなくて、うちの会社きってのエース!」

意気揚々と俺の自己紹介をしたと思えば、

「確かに!カッコいい!」

っていう1人の反応を聞いて青い顔になったからこの子が好きなんだなって丸わかりだ。


へぇーって隣に視線をうつすと肉食動物を目の前にした小動物みたいな子がいた。

下向いてるし、なんか縮こまってる。


「おい、俺にもそろそろ紹介してくれないか?」

成瀬をチラッと見ると、結局如月先輩も男ですね~なんだかんだ楽しんでるんじゃないですか~にやけ顔をさらにくずしながら

「そうですよね!!すみません!
僕の目の前の子が、らなちゃんで、隣の子が紗良ちゃんです!
ちなみに先輩の相手は紗良ちゃんの方ですからね。」

最後にこそっと耳打ちされた。

「ああ、だろうな。」
今更なんだと思って返したのに本気で驚いてたから、こいつは自分の気持ちがダダ漏れであることに気づいてないらしい。

こんなにバレバレじゃ駆け引きもなにもあったものじゃない。

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