ライアー
「苦手な食べ物とかある？」

隣の成瀬は完全に「らなちゃん」とのおしゃべりに夢中だったから、目の前の彼女にメニュー表を差し出す。
「あ、いえ、あの大丈夫です。すみません。」

返されたメニューを流し見ながら適当に注文し終わった後、彼女を見ると相変わらずうつむいて、縮こまっていた。

気まずい沈黙を埋めるために、いくつか質問を投げかけても一問一答で終わってしまうので、会話というよりも面接みたいな感じになった。

答え終わったらすぐにうつむいてしまうし、体全体で俺との会話を拒否しているのがビシビシ伝わってくる。

俺と同じように無理やり連れてこられたのか、なんて嫌な気持ちなるどころかむしろ同情した。

きっと彼女も俺同様この時間が早く終わればいいなんて思っているのだろうな。

だからこそ、帰り際に
「また会ってもらえませんか？」
と言われた時は、本気で驚いた。よっぽど不慣れなことをしたのか耳まで真っ赤にして、俺の手に連絡先が書いてあると思える紙を握らせるとらなちゃんのもとに走り去っていった。

「せんぱぁい！よかったですね！あんな赤くなっちゃって可愛いったら」
ほんのり頬を赤くした成瀬が近づいてくると、あんな奥手そうな子にそんなことをさせるなんてどんな技を使ったんですかってダル絡みしてくるから無視して駅に向かった。



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