昨日の向こう《図書館戦争》
正化X年

「玄田さん、日直明日お願いしますね」
まっすぐに俺を見て無表情と微笑みのギリギリのラインくらいの表情で淡々と話す。
澄ましたやつ。
これがあいつに対する俺の印象だった。
親の転勤で高校2年の春からこの高校へ入って、人とはすぐ仲良くなれるたちだったから、こう他人行儀な言い方をされると鼻に付く。
「おう。朝一で職員室行って日誌だよな」
本当はそんな事くらい分かっている。
「はい、お願いします」
こうやって素っ気ない返事が返って来るからそれ以上続けようがない。
かれこれクラスが始まって一ヶ月もすると印象なんて大抵変わってくる。特にこいつの印象はだいぶ変わった。澄ましたやつ、なんて他のクラスメイトには思わせないくらいよく笑うしよく怒る、そんなやつだった。
「おい、折口!お前のプリント写したらB評価だったぞ!」
サッカー部でクラスの中心とも言える柴田が、返って来たプリントを見て教室の端から完全に理不尽な文句を言う。
「写すのが悪いんでしょうが!B取らせてやった私に感謝しなさい!」
負けじと折口が言い返す。
ほら、面白そうなやつじゃん。なのになんで。なんで俺にはあんなに素っ気ないのか。悪いことした記憶は断じてない。転校生への不審感なのか。
始めはこう思っていた。
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