緋色の勇者、暁の聖女
夏休みは三日後に迫っていた。学期末のテストも終わったし、授業にも集中出来ない。学校全体が夏休みを目前にしてざわざわと落ち着かない雰囲気。教室の窓からは、空に大きな入道雲が見えた。
彼女はそんな暑い日に、二年A組の僕のクラスへ転校してきた。
担任が紹介すると音を立てずに彼女は教室へ入り、黒板へ担任に促されて白いチョークで名前を書いた。そのどの動作も音を立てず、まるでふわふわと実態が無いような不思議な印象を受けた。
『暁 零 (あかつき れい)』
綺麗な読みやすい文字でそう書いた彼女は、さらりとしたストレートの長い髪。背はそれ程高くはなく、黒目がちな瞳。それが何となく彼女の雰囲気に良く合っている気がした。
でも一番目を引いたのは、病的なまでに白い肌。そんな透き通るような肌を見たのは初めてだった。
「――――みんなに知っておいて欲しい事がある。暁さんは病気で、声が出せないんだ」
担任の言葉にクラスがざわめいた。
『なんとか』っていう病気のせいらしいと、そのざわめきを静めるように担任は言葉を続ける。みんなの声や音は聞こえて理解できるけど、声帯の病気で声を出す事は出来ないそうだ。
他にも担任はいろいろ言っていたが、説明が少し専門的過ぎて僕にはよく分からなかった。
分かったのは、話せない彼女が僕の隣の席になったという事だけだった。
彼女はそんな暑い日に、二年A組の僕のクラスへ転校してきた。
担任が紹介すると音を立てずに彼女は教室へ入り、黒板へ担任に促されて白いチョークで名前を書いた。そのどの動作も音を立てず、まるでふわふわと実態が無いような不思議な印象を受けた。
『暁 零 (あかつき れい)』
綺麗な読みやすい文字でそう書いた彼女は、さらりとしたストレートの長い髪。背はそれ程高くはなく、黒目がちな瞳。それが何となく彼女の雰囲気に良く合っている気がした。
でも一番目を引いたのは、病的なまでに白い肌。そんな透き通るような肌を見たのは初めてだった。
「――――みんなに知っておいて欲しい事がある。暁さんは病気で、声が出せないんだ」
担任の言葉にクラスがざわめいた。
『なんとか』っていう病気のせいらしいと、そのざわめきを静めるように担任は言葉を続ける。みんなの声や音は聞こえて理解できるけど、声帯の病気で声を出す事は出来ないそうだ。
他にも担任はいろいろ言っていたが、説明が少し専門的過ぎて僕にはよく分からなかった。
分かったのは、話せない彼女が僕の隣の席になったという事だけだった。