天罰
居酒屋に着くと久々の大学時代の友達に会えた喜びに心が踊った。「お!大介来たか!ここここ。お前結婚したか?」と突然の不躾な質問に一斉に場が盛り上がった。「まだしてねーよ!誰か紹介しろ!」と軽口を叩くと「俺もだ。誰か紹介して」と言って傷の舐め合いが始まった。適当に食べたり飲んだりくだらない話で盛り上がってる中、不意に俺は遠くの端に座る女性に目が留まった。少しパーマが掛かった茶髪のロングヘアに男を惹きつけてやまない色っぽいアイメークに薔薇のように赤い唇、整った鼻筋に美しい横顔。あんな綺麗な人いたっけと思い巡らせていたら突然「水城ちん、更に綺麗になったよなぁ」と俺の隣に座る友達が言って来た。「あぁ、水城さん!」その名前で俺は自分の過去や彼女を好きだったことを思い出した。「お前ら付き合ってたんだろ?」「付き合ってねーよ、何の話だ?」その時俺はふとあることを思い出した。あの時、彼女から初めて声を掛けてきて俺の家に来た時から水城さんは俺の弟に興味を持ったことを知った。そして何度か二人が会ってることも知っていた。あの日以来、良く二人が公園に行ったり、手を繋いで俺の家に入ったりしてるのを見たと近所の人から聞いたことがあった。弟に聞くと「桃さんは弟が欲しかったから僕に優しくしてくれてるんだよ」と言った。けど俺はどうも納得がいかなかった。俺が悟に「また水城さんに会ってるのか?」と聞くと「お兄ちゃんには関係ないだろ」と誤魔化した。あれは絶対水城さんに口止めされたんだろうと思った。俺は確かめるべく立ち上がって水城さんの方に近づいた。
< 10 / 65 >

この作品をシェア

pagetop