シェヘラザード、静かにお休み
視界の端でそれを注意深く観察する。
荷物は少ない。近くに宿があるのかもしれない。
「お先に紅茶、失礼します」
女の方へ紅茶を置く。二人は声を出さずに、それを見ていた。
シーラは極めて冷静に声を発した。
「もしかして、」
男が少し顔を動かした。しかし、シーラは女の方しか見ていなかった。
同じように、女がシーラを見上げていた。
しまった。
「王女様ですか?」
空気が凍る。女の顔が、アメリア王女の頬が、ぴくりと痙攣した。
「本物ね」
人の好さそうな笑顔から発せられた言葉。シーラは王女の腕を掴もうと手を伸ばした。