シェヘラザード、静かにお休み
正直、拍子抜けしたルイスは「そうか」としか返事ができなかった。
「私の経歴知ってるんでしょう? 孤児院出の私に、婚約者がいるわけない」
そう言われて、シーラの経歴を思い出した。
北の孤児院で育ち、三年前にそこを出て食料雑貨店の店員をしていた。国家警察からマークもされていない。
普通に街で働いている女性だった。
待て、と自分の思考にストップをかける。
「猫は……どこの猫だったんだ?」
シーラはルイスを「好きだった猫と似ている」と言った。
「アパートメントの隣の部屋に住んでる人が飼ってて、たまに世話してたの」