ドクター時任は恋愛中毒
「類さんは帰ってください。私、航河さんのカウンセリングを受けるので」
「カウンセリング? それなら俺も同席し――」
「お断りします。豊胸手術の相談なので、聞かれたくありません」
「ほっ、ほう、きょう……?」
脳内で漢字に変換できないらしい類さんが言うと、間抜けなウグイスが鳴いているよう。
……ふんだ。ずっとそうして困ってたらいいんだ。
「航河さん、中に行きましょう?」
「はーい。ではまた、時任センセ」
状況を呑み込めず立ち尽くす類さんをその場に残し、私は航河さんとともに、開院前のクリニックの扉をくぐった。
しかし類さんから見えないだろうという場所まで来ると、私はうずくまり、はぁ、とため息をつく。
「……よかったの? あんな態度で」
全て見透かしているかのように、航河さんが声を掛けてくる。私は少し顔を上げ、「わかりません」と力なく呟く。
「まぁでもあんな風に意地になっちゃうくらい、彼のことが好きなんだっていうのはよくわかったよ。ちゃんとプロポーズ、してもらえるといいね」
「うう、期待はできないです……」
半泣きで嘆く私に、航河さんが軽い調子で提案する。
「じゃあ、僕と結婚する?」
「嫌です。類さんがいい」
「うわ、即答だ。だったら、ちゃんと説明してあげたら? あの人、女心を察するとか無理そうじゃん」