御朱印が導く先は
早期発見、早期退散の
精神で、うまく接点を
持たずにやれていた
ハズだった。
修行僧さながら
無の境地で後退する。
だが——
世の中そうそう、自分の
思惑通りにはいかないようだ。
「……あ」
振り返った拍子に、
目が合ってしまった。
営業部のモテ主任と。
ワタシは空気。
ワタシは透明。
ワタシは無。
呪文の様に、己に言って
聞かせるが、あろうことか、
彼はニコリと笑み
こちらに手を振ってきた。
……なんで手を振る!?
ワタシは空気。透明。無。
そのはずなのに。
一歩、二歩と後ずさり。
玉砂利がガリッと音を立てる。
「——あの」
声をかけられた。
あの、モテ王子から。