漢江のほとりで待ってる
「そうそう、慶太さん、近いうちに青木さんと二人で、青木さんのお母様のいる韓国へ、結婚のご挨拶に行って来なさい!」
三人は驚き、雅羅を見た。
「母上!?」と慶太。
「何を驚いているの?慶太さん。あなたのものを取り返しただけ!それに青木さんなら、安心して慶太を任せられるわ」
雅羅は目を細めた。
「あぁ、そうでしたね、母上。私は幸せ者ですよ。さて、私はシャワーでも浴びて来ようかな。スーツも体も汚れたようだ」
慶太は雅羅に話を合わせた。
―――― そこまで話が進んでいるのか……
足元がふらつく由弦。
「あら?まだいたの?」
由弦に向かって雅羅は言った。
いたたまれない気持ち、やり切れなさが込み上げてくる。
由弦はそこにいる全員を見渡し鼻で笑った。
最後に椎名を睨みつけた。
椎名はその視線が何を意味するか分かっていたから、由弦の顔を直視することが出来ず、俯いたまま静止していた。
ふらふらな足取りで、その場を由弦は出て行った。
「由弦!」
珉珠が叫んで追い掛けようとした、彼女の手を引き留めた慶太。
遠ざかって行く由弦。