漢江のほとりで待ってる


「これだけの事件を起こしたきっかけを作ったのは、紛れものない私の責任なんだ。世間に洗いざらい話そうと思っている。そうでないと世間の騒ぎも収まらいだろう。慶太のことも心配だ」

不意に弦一郎が話し出した。

二人黙って聞いている。

「慶太も由弦も自分達のことをあまり語らない。思っていることは尚更……いや、言わせないようにしていたんだ、この私が。知らず知らずに二人の間にも溝が生じたことすら気付いてやれず。苦しかったろう」

「そんなご自分を責めないでください。副社長も由弦さんも、社長の気持ちは分かっていらっしゃると思います」と気遣う珉珠。

「そうですよ、社長。分かっているからこそ、あえて意思表示しない時もあるんです。分かっているから……」

一条は由弦の顔を見つめながら言った。

「分かっているからか……」溜息まじりに弦一郎は言った。

「はい。反面、心の痛みを軽減したくて、誰かに聞いてほしくて共有してもらうつもりが、愛情を知らない人間にとっては、それをも相手に負担と考えてしまい、うまく話せなかったり、話すことすら躊躇ってしまう」

言葉を続ける一条は、自分にも重ねていた。


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