漢江のほとりで待ってる


「共有を負担?そんなこと思わないのに」

珉珠はそう言うと由弦の手を撫でた。

「重い奴って思われたくないんです!特に好きな人からは。頼り甲斐のあるヤツだと思われたい。自分が年下なら尚更。甘えたいけど、頼られたい」

「ふっ。何だか可愛らしい」珉珠は少し笑った。

一条もそれに笑って俯いた。

「重いだなんて一度も思ったことなんてないのに、由弦、あなたは何でも一人で背負い込み過ぎよ」

珉珠は呟いた。

そこへ、一条の部下が呼びに来た。

「うん。分かったすぐ戻る」そして、

「申し訳ありません。急用で会社に戻ります。珉珠さん、すみません。また来ます。由弦またな!社長失礼致します」

「あぁ、分かった。気を付けなさい」

珉珠は立ち上がり一礼した、一条も頭を下げ出て行った。

「あ、そうだ、青木君、由弦から大切なものを預かっていたんだ。自分にもしものことがあったら、渡してくれてと頼まれていた」

珉珠に、手紙を手渡した。

由弦は、慶太に呼び出されたあの日、別荘に行く前に、弦一郎の所へ行っていた。

「兄貴をどうか止めてほしい!義母様のことも!もう父さんしか止められない!二人のことちゃんと見てほしい!!それでオレを、高柳の籍から外してください!元々あってないような親子関係だったし。オレは小田切(由弦の母親の旧姓)の名前で生きて行くから。それとオレにもしものことがあったら、彼女にこれを渡してほしい」

来る途中でしたためた手紙と、例のパソコンを、事情を話して、父、弦一郎に託していた。

その時に、初めて弦一郎は、慶太や雅羅、椎名の計画や思惑を知らされた。

弦一郎は、手紙を渡したあとすぐ、気を利かせ部屋を出て行った。


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