漢江のほとりで待ってる
場所は変わって、高柳本家。
病院から戻った弦一郎は、雅羅に全てを世間に打ち明けると言い出した。
それを聞くなり、
「そんなことをしたら、慶太の将来はどうなるの!!あなたはいつもそう!!自分のことばっかりで、私や慶太がどんなに淋しい思いをして来たか分からないでしょ!!ずっとずっと苦しんで来たのよ!!」
「お前達には本当に申し訳ないことをしたと思っている。いい訳も詫びる言葉もないほどだ。だから、背負うものが大き過ぎるから、みんな楽にしてやりたいだけなんだ。椎名の気持ちも汲んでやらないと」
「そんな言葉聞きたくありません!今からでもいい!あなたの口から、後継者は慶太とはっきり世間に発表してください!それが唯一の私達への償いで、詫びの言葉ではありませんか!!」
「それは出来ない!」
「なぜ!?由弦さんのこと!?」
「……」
「あの子は愛人の子でしょ!」
「それでも私の子だ!」
弦一郎の一言で雅羅の形相が変わった。
「私は本妻です!!慶太は正式な跡取りです!!絶対に勝手な真似はさせませんから!」
その言葉に弦一郎は頭を抱えた。
「分かってくれ雅羅……」
「そんなに?そんなに由弦さんが可愛い?なら、……好きになさいませ!私は、私のやり方で慶太を守ります!そして必ず慶太を後継者にしてみせます!絶対にあなたのことは許さない!あなたが可愛がる由弦さんのことも!!」
そう言うと雅羅は部屋を出て行った。
「雅羅待ちなさい!雅羅!はぁ~……」
途方に暮れる弦一郎。
雅羅の怒りは収まらなった。
やはり、弦一郎は由弦を後継者に考えていたと思い込んだ。
弦一郎の思惑通りなどさせまいと、雅羅はあることを思いつく。
残された弦一郎は、雅羅の言葉を思い出した。
「私のやり方で慶太を守ります!」
―――― ……!!
弦一郎は雅羅のことが気になり、慌てて部屋を出て行った。