漢江のほとりで待ってる
「由弦!待って!」
由弦の前に立ちはだかった。
「何か?」
とても冷たい目で、珉珠を見つめた。
その視線に思わず逸らしてしまう珉珠だったが、すぐに向き直して、
すぐに慌てて、
「これを」
珉珠は何かを差し出した。
「……!!」
見ると、あの時の時計だった。
修理されて、前のように綺麗に元通りになっていた。
慶太から本社に戻らないか?と、話も持ち掛けられたあの日、珉珠は時計を修理に出していた。
「渡す相手を間違っていませんか?ペアウォッチでしょう?なら、兄貴に渡すべきだ。思う存分、兄貴の時間を束縛してやって?たくさん楽しい時間を共有してください。お幸せに」
そう言うと受け取らず、珉珠を交わして行ってしまった。
二人のあとを追って来た一条、
「気にしないでください。あいつも色々環境が変わって戸惑っていると思うんです」
「えぇ」
珉珠は何となく違和感を覚えた。
「由弦はまだ、記憶は戻ってないんですよね?」
「はい」
「ならどうして?こんなに気まずいのかしら。彼の気持ちが分からない。それに、どうしてペアウォッチって分かったのかしら?初めて見るものを渡されたら、大抵の反応って、「これは?」って聞いたりしませんか?まるで自分のものって分かってたような口調だった」
「さ、さぁ、どうしてでしょう。あいつ変に勘がいいから」
苦し紛れに一条は言った。
「そんなものかしら……」
不思議に思う珉珠だった。
一条は、本当のことを知っているだけに、彼女に言えないのが苦しかった。