漢江のほとりで待ってる
それに並行して、くだらない由弦の戯れは続く。
たまたま珉珠と乗り合わせたエレベーターに、慶太が乗って来た。
一瞬険悪なムードになったが、慶太は由弦を無視して、珉珠に話しかけた。
由弦の前に二人が並び、
「あ!ドレスの件、ちゃんと試着したかい?一生に一度のことだから、君の美しさが引き立つように、作らせないと」
「え、えぇ。はい」言葉を濁す珉珠。
「今夜どこでディナーをしようか?」
「そうですね……」
慶太と珉珠は仲良く会話をしていると、それまで何もしなかった由弦が、後ろ側から、珉珠の手を握って来た。
この時、慶太の腕時計を見て、珉珠とペアウォッチを確認した。
―――― 気が変わるのが早くありませんか?珉珠さん。ホントに兄貴の時間を束縛するだな。心のどこかで、オレのことをなんて、信じてたとこあったけど……
由弦は心で思った。
珉珠は、慶太にバレないように振り解こうとするが、由弦の力は強くて解けない。
「じゃあ、珉珠君また」
慶太が降りる瞬間、由弦は素早く手を解いた。
何もなかったように取り繕って、慶太を見送った。
また二人きりになり、
「どうしてあんなことを!」
珉珠は怒りを露わにした。
「何で止めてくれ!と叫ばなかった?声ぐらい出せただろ?恋人に助けてもらえばよかったのに」
平然とした顔で由弦が言った。
「ホントは嫌じゃないんじゃないの?」
降りる間際、由弦は薄ら笑いを浮かべながら去って行った。
図星だけに?由弦の言葉に言い返すことが出来なかった。
どこかで、由弦のことを思う自分がいたから。