漢江のほとりで待ってる
マンションの中庭のベンチに座り、途方に暮れる由弦。
探し回った珉珠は、やっと由弦の姿を見つけた。
その姿は、肩を落とし、やり切れないそのものだった。
息を切らしながら、
「由弦!勘違いしないで?副社長は用があって来たの、私に会いに来たんじゃないし、私もそんなつもりは一切ない、わざとあなたに見せつけるつもりで部屋に呼んだんじゃないから!」
「もういいよ、オレは大丈夫だから、兄貴のとこに帰りなよ」
「由弦~!」
「何で?オレのこと好きとか言いながら、何でオレを殺そうと企んだ奴と平気で会えるの?オレはまだ、兄貴達に会える免疫力つけてないのに!アイツの顔見たらトラウマが蘇る!やっと忘れたと思ったら現れて、顔見たらどうしても、憎しみが込め上げる!気持ちが堂々巡りするんだ。たかがあのUSB一つのために、大の大人が血眼になってオレを狙って、こんな思いさせられるなんて。やった方は罪償ったらそれで終わりだからいいよな?それから立ち直って社会復帰したら、よく頑張った!って称賛までされる!傷付いた側は、傷が治っても、心に残った傷だけがいつまで経っても癒されない!普通の生活に戻ろうなんて、夢か幻だ!その時の記憶が無くならない限り忘れない!ずっとずっと苦しいままだ!!」
珉珠は分かっていても、かけてやれる言葉が見つからない。
抱き締めることしか出来ない。
由弦の言う通り、慶太達は由弦の命を奪ってまでも、USBを必死で探していた。
確かに、マスコミも慶太の立ち直りを絶賛していた。馬鹿みたいに。
その裏で由弦はひたすら苦しんでいたというのに。
自分を必死で守ろうとしてくれていた彼に、恩を仇で返すようなことまでしてしまった。
考えなくても、婚約なんて、本当に惨いことをした。
ずっと、彼に対して無神経なことばかりして来た。
「副社長とはもう会わないから、連絡も取らない」
「そんなレベルじゃない。それにそんなこと望んでない。ホントにオレはもう大丈夫だから」
「由弦……」
懇願するように、由弦の顔を見た。
由弦は珉珠を振り払うように、視線も合わさずその場から離れて行った。
しばらく珉珠はその場に座り込んだまま、由弦の言葉を思い返していた。
それから思い出したように、ふらりと立ち上がり、自分の部屋に戻った。
部屋の入り口には、由弦が食べていたアイスクリームと、炭酸水が落ちていた。
「私はただ由弦に、手作りのジンジャエールを飲ませてあげたかっただけなのに……」
それを見ながら、珉珠は呟いた。