漢江のほとりで待ってる
家に帰った慶太は、先ほどの、珉珠との会話を弦一郎にも話した。
「由弦は、未だに後遺症と闘っているそうです。青木君とつき合ってたことを、記憶がなくても話してほしかったと聞きました。そして、自分は生まれて来なければよかったと、そう言って苦しんでるそうです。会って声を掛けてやりたかったが、この私に何が言えましょう」
慶太は少し他人事のように言った。
「そうか……」弦一郎はそれ以上何も言わなかった。
雅羅もまた、俯いたまま何も言わない。
それから慶太は、由弦のことが気になり珉珠に電話した。
珉珠から、由弦は見つけたが、指輪は返せないまま別れたと言った。
そして、
「彼をこれ以上苦しめたくないので、もう連絡はして来ないでください。何もなかったかのように会ったり、当たり前のように電話し合ってるなんて普通じゃない。私が無神経過ぎました。二度と会うことはないと思います!それと彼の大切な指輪を探してくださり、本当にありがとうございました」
珉珠がはっきりと意志表示をした。
彼女の言葉に、なぜか慶太は、足元から崩れて落ちて行くように、力が抜けた。
何か大切なものを失ったような、この時初めて慶太は、自分の罪の大きさを、今更ながら思い知らされた。
その反対に由弦は、小田切邸に戻り、「会社復帰する」と椿氏に宣言した。
「例の件、進めます。あの人の会社を潰す!」
あの虚ろだった目が、何かに目覚めたように、まるで上空より気配を消しながら、獲物を狙う鷲のような鋭い目付きで言い放った。
そして自分の両足でしっかりと踏ん張って立ち、由弦は決意した。
椿氏は、不安だった。
復讐心が先回りしている。周りが見えなくなって暴走する由弦を止めることが出来ない。