漢江のほとりで待ってる

ある日の休憩時間、社内にある中庭で、沈んでる宇海を、仲里は見つける。

宇海にアイスコーヒーを渡しながら、

「すっかり夏ね~、陽射しが痛いわ~」

太陽に手をかざしながら仲里が言った。

首だけ下げながら受け取る宇海。

「何ふて腐れてんの?」

「別に」

「不公平だと思ってる?」

「……!?」

「甲斐さんがプロジェクトリーダーになったこと」

「だって彼女は、男のケツばっか追い掛けて、玉の輿に乗ることしか考えてない!特に地位とか財力のある男には媚び打って。だからどうせ今回のも上司にうまく取り入って、企画だって通したに決まってる!」

「そうかしら?」

その言葉に、不満気に仲里を見つめた宇海。

「彼女の企画通したの、江南部長よ?何のひいき目もないと思う。ほんとによかったからだと思う。何でか分からない?」

「……」

「彼女、この企画を考え始めてからずっと、高齢者施設を回ったりしてたの。それは今でも続けてる。CSRにも繋がってるし、色んなとこで貢献して、その先、信頼っていう形で、高柳グループ自体にも大きく還元されるはずよ。それに彼女、きっと自分の評価なんて考えてもないだろうし、興味もないはず。今やってることに興味があるだけなのかもしれない。だから一生懸命になれるのかもね。考えるよりまず行動!何でも義務として彼女はやってる訳じゃないと思う。心からお年寄りの方達と接して、触れ合うことで互いに打ち解け、彼女の頑張りを見て、相手からも認めたれて、信用も生まれる。仕事に私情を挟めと言ってるんじゃないわよ?今回は甲斐さんの特異性、人懐っこさや、彼女の思いやりだったりが、評価に繋がった。だからって誰にでも彼女と同じようにしろって言ってる訳じゃない。人には得手不得手があると思うから。だったら、彼女ができないことをやればいい。今回同じプロジェクトを手掛けるなら、彼女の不得意な所をサポートしてあげるとか、例え彼女の企画だとしても、宇海君にしか出来ないものがあるはず!そこから何か新しいものが見いだせる場合もある。あなたはコミュニケーション能力は高いし、頭の回転もいい、話も面白い、言葉もたくさん知ってるし、気の利いた言葉も出てくる、のになぜか、いまいち相手の深い所に届かなくて悩んだりしない?」

「……!!」

「ふっ、言葉に厚みがないからだと思う。親切と優しさの違いが分かったら、宇海君もっと魅力的な男になると思うわ。あの天才クリエイター、高柳由弦に憧れてんでしょ!?ちょっと考えてみて?頭の良い宇海君なら分かるはずよ!」

宇海の肩をポンと叩いて、仲里は戻って行った。

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