漢江のほとりで待ってる
椎名が去ったあと、慶太のデスクに、ファイルと大きめの封筒が置かれてあった。
何気に慶太はそれに目をやり、開いてみた。するとそれは、今回のイベントの企画とデザイン画だった。
それがすぐに由弦のもであることも分かった。
企画書の入った封筒には、メモ書きが貼られてあった。
「これを生かすも殺すも坊ちゃん次第です。それと、勝手ながら明日、明後日お休みを頂きます。申し訳ございません」
と書かれてあった。
―――― 椎名おじさん……こんなことまで。おじさん、あなたは幼い頃から私の味方だった。ずっと。私が泣いていたら、いつも傍にいて慰めてくれた。それは今も変わらず。もしかしたら……なんて。そんな訳ない。
自分のためにしてくれた、椎名の気持ちが痛いほど伝わって来た。
そうこうしているうちに、本社にクリストファー・ノーブルがやって来た。
彼が一時的に一世を風靡した時期から、かなりの期間、メディアから遠ざかっていた。
その沈黙を破りの来日ともあって、ロビー前には多くの人だかり、マスコミ陣も集まり、フラッシュの嵐。
社内でも歓声が沸き上がった。
人だかりをかき分け、護衛に守られクリストファーが副社長室に入って来た。
今回のイベントのため、あくまでパフォーマンスの一環として社内に彼を招いた。
仲良く握手を交わす二人の姿が報道された。
全ての人間を払い、二人だけになった部屋で、慶太は由弦のデザイン画をクリストファーに渡した。
「参考までにしてほしい」と慶太は言った。
それを見るなり感嘆したクリストファー。
「これを描いた人間は天才だ」
「何とかその絵を活用して、少しばかりあなたの才能を描き加えて、もう一度とクリストファーの名前を世界に知らしめてください。それだけでこちら側にもメリットになりますから」
慶太は余裕の笑みさえ浮かべた。
誰かの絵を盗んだものではないかと、クリストファーが訪ねると、
「ご心配なく!もしそんな言い掛かりをつけてくる輩がいたら、逆に盗まれたと言えばいい。そいつが描いて来た絵は、全て自分が描いた絵だと、自分の案だと言い切ればいい!あなたの方が経歴も上だ。誰もがあなたを信じるはず!全て私に任せてください」
慶太は自信満々に答えた。