〜starting over〜
この関係、一歩前進させてみようと思います。

翌日は、朝からリハーサルがあったので湊さんに送られメンバーと合流した。
昨夜、湊さんは都心のマンションに帰ろうとしたけど、お父さんが酒の相手にと放してくれず。
結局我が家に一泊。
両親が寝静まった後、湊さんに用意された客室を訪れ、今日の両親との仲を取り持ってくれたお礼を言った。
その時の話で、此処に到着した時、家から出てきたお客さんってのは佐伯の伯父さんと弁護士だったらしい。
実は、野乃花が私達のライブの控室を訊ねてきた時、野乃花の後を追って佐伯の叔父さんと連絡を取る事に成功したのだそうだ。
『いつからそんな機転が利く子になったの!?』の言葉は寸でで飲み込み、神妙な顔を装う。
頑張ってくれたのに、余計な事は言っちゃあいけない。
佐伯小父さんは両親へ今までの謝罪をし、少しずつ返済の約束したそうだ。
弁護士同席のもと、念書も作成したらしい。
湊さんは私の父を何処かリスペクトしてるような節があって、父絡みの事案には重たい腰も軽快にあがるらしい事が解った。

奈々も実家に泊まったらしく、奈々ママ特製のおにぎりを大口で頬張っていてご満悦そうにしている。
豪華な食事より、有名店のお弁当より、食べなれた物は何にも代えがたい食事だと、私は知った。

凱旋ライブは、真輝が地元に滞在してることで、外部との接触は家族以外完全禁止され、周囲への警戒は厳重になったけど、なんだかんだ大盛況で幕を閉じた。


それから更に月日は流れて、私は20歳になった。
Museは安定の人気を維持しつつ、其々の個々の活動が増えてきた。
初めての凱旋ライブでの瑞樹の交際宣言は、一時世間をざわつかせ、私はまた世間の女子から恨みを買うはめになった。
遊び人だった真輝、実力派人気イケメン俳優の瑞樹。
私にビッチ容疑がかけられ、面白おかしく書面を飾る事も多々あったけど、私はまだ処女。
雑誌やネットユーザーめ。
ビッチと謳いやがって、名誉棄損で訴えてやりたい。
瑞樹は大事にしてくれたけど、私には一歩が踏み出せなかったのよ。
待つと言ってくれて、その言葉に甘えてる間に瑞樹はハリウッド進出で渡米。
向上心の高い人だったから、高見を目指し万進した。
結局、私達は別れる事になった。
この世界での交友関係も広がり、何人かに交際を申し込まれることはあったけど、胸にあるシコリが拭えず友達以上に至る事もなかった。
< 67 / 104 >

この作品をシェア

pagetop