敏腕メイドと秘密の契約
『藍ー、随分長く入ってるようだけど溺れてないよね？』

お風呂のドア越しに天音の声が聞こえる。

「ふぁーい、大丈夫,,,」

一瞬、だと思いたいが眠っていたようだ。

藍は日頃からお風呂に浸かることを楽しみにしていて、しかも大の入浴剤好き。

お気に入りは天音の入れてくれたブルーローズの香り。

洗面台の棚には数種類の入浴剤を入れておいたはずなのにどうしてこれが好きだとわかったんだろう？一番後ろにおいていたはずなのに。

藍は湯船から出るとバスタオルを巻き付けた状態で脱衣所に出た。

「わっ！」

心配そうな顔でお風呂の入り口に立っていた天音はバスタオル１枚の藍を見て、顔を真っ赤にして飛び退いた。

「ご、ごめん。俺、あんまり遅いから心配で,,,」

さっき"アメリカ式で行く！"と明言した天音はどこに行ったのだろうか？

「こっちこそ心配かけてごめん。待たせちゃったかな？すぐに着替えるね」

藍は特別気にする様子もなく、ルームウェアに手を伸ばす。

素顔の、そして素肌の藍は、想像以上に美しい女性に成長していて、天音は思わず見とれて立ち尽くしていた。

しかし、

藍は一向に動こうとしない天音に業を煮やし、

「ねえ、天音？着替えてもいいかな？」

と言った。

「ごめん、綺麗すぎで見とれてた。ピザ来てるよ。着替えたら食べよう」

さっきの調子を取り戻した天音は、笑顔でその場を立ち去った。
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