敏腕メイドと秘密の契約
"ジョン?!"

かつてアメリカで、藍とルームシェアをしていたというアイツだろうか?

天音は顔をしかめて、藍の方を見た。

藍は最大のため息をつくと、フルフルと首を振りおもむろに立ち上がって言った。

「出かけてくる」

「ちょっ、藍どこ行くの?」

藍は天音の問いには答えずに、

"井上弥生になる"べく変装を始めた。
本当なら頬から下にも特殊メイクを施すのだか、その時間すら惜しいらしい。
ボブカットのかつらを着け、マスクをするとアイメイクだけを施して清楚なワンピースに着替えた。

「俺もいくよ」

天音はチノパンにシャツというラフな格好ではあったが、ジャケットを羽織ればそれなりにはみえるだろう。

「天音にはその権利はあるわね」

藍の表情が少し和らぐと

「もう変装の必要はないのかもしれないけど,,,。」

と呟くのが聞こえた。

「えっ?」

藍は問題のパソコンを小脇に抱え、バッグとコートを掴み玄関に向かって歩きだした。

訳もわからず天音がそれに続いた。



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