敏腕メイドと秘密の契約
企業見学は百々こおりなく進んだ。藍がバイリンガルであるお陰で、海外の顧客からのどんな質問にも即座に返答することができた。

会社の概要、取引先、商品、現在の事業,,,。
今では、藍の頭の中にすべて入っている。

幹部しか知らない話は天音にふるしかないが、大抵の質問には、藍が英語もしくは質問者の母国語で返答していたので、見学もたいして時間がかからなかった。

『ミス木下、秘書なんかもったいないよ。私のところにきて働かないか?ここの倍の給料を出そう』

この短時間にも、見学していた国内外の企業役員数人から勧誘を受けた。

藍のほんの一面しか知らない者でもこの対応である。藍は決して能力を全開にすることはない。

藍は、表情を崩さぬまま無表情で答える。

『いえ、現状に満足しておりますので』


物怖じもせず、海外の顧客に対応している藍を見て天音は、少し口角を上げた。

"この鉄仮面を崩す瞬間を最初に見るのは俺だ"

知れば知るほど興味深い存在。

もちろん、スパイ騒動も情報漏洩も本当の話。

これを利用する手はない。

"10年前から募らせてきた思いを満たす"

それが天音の真の目的であった,,,。
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