敏腕メイドと秘密の契約
天音は大学を卒業し、父親が社長をしている倉本システムエンジニアリング株式会社(倉本SE)に就職した。

大学ではシステム工学を選択した。海外留学の話もあったが、そこに三浦藍がいない以上、興味は湧かなかった。

三浦藍が日本を去ったあと、天音は、三浦藍の実家について調べ始めた。

両親は"三浦HS"という、VIPのみを対象とした派遣業のようなものを営んでいるらしい。
詳細はVIPのみにしか明かされていないため、結局何をする会社かわからなかった。

四人兄妹で、二人の兄は警視庁SPと弁護士。
やはりとんでもないインテリ家系だ。

それ以上の追加情報も得られぬままではあったが、
天音の中から三浦藍の存在が消されることはなかった。


倉本SEに入社して、2年。

評判の悪かった副社長の松山が心筋梗塞で倒れた。

松山は、常に社長の座を狙って何かを目論んでいたが、
手術後の経過が思わしくなく、早期退職することになってしまった。

後任には、数名の幹部職員の名前が上がっていたが、
度重なるハッキングや情報漏洩から、

システム工学に詳しく、実力のある天音に白羽の矢があたった。

もちろん親の七光りであることも否めない。

しかし、そんなことは大したことではない。

天音にとって、この一部上場企業の幹部職員になることは、浅はかな夢を果たすために必要な過程だったから。
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