極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
それでも彬良くんの明敏さが鈍ることはなく、状況を検分し、すぐに外傷性ではなく心因性のショックと判断をくだしたみたいだ。

その後の処置は、迅速かつ的確だった。
寝室に行って毛布を取ってくると、それでわたしの体をくるんで抱き上げ、ソファに下ろした。
「ちょっと待ってて」と告げると、キッチンへ向かって、ほどなくマグカップを二つ手にして戻ってきた。

飲みな、と差し出されて、条件反射的に受け取る。たっぷりの温かいミルクティーだった。
ひと口すすると、温もりとほのかな甘さがじんわりと体にしみてゆく。

「なにも食べてないんだろ?」

ミルクティーをちびちび飲んでいると彬良くんにそう言われて、こくんとうなずいた。
ふたたび彼の姿が、キッチンへ消える。

なにか食べられるもの冷蔵庫にあったっけな。昨夜は彬良くんの帰りが遅かったから、ひとりでナポリタンを作って食べたんだった。
多めに作っちゃったから、残りは保存容器に移して冷蔵庫に入れてあるけど・・・

しばらくすると、香ばしい匂いが鼻孔をくすぐった。
あれ、この匂いは・・・食欲よりも、記憶を刺激される。
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