極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました



旅行行かない?

彬良くんの提案は突然だったけど、きっと彼の中ではタイミングも日数も場所も計画されていたんだと思う。

リビングでふたりで食後のおしゃべりを楽しんでいたときだった。彬良くんはブラックコーヒー、わたしはミルクティーを飲んでいた。

ふと会話が途切れたタイミングで「旅行」という言葉が、彼の口から放たれたのだ。

「旅行?」思わずおうむ返しにして目を丸くしてしまう。

「今度の三連休、空けられそうだから。ずっとかかりきりだったプロジェクトが一段落したし、ちょっと骨休めしたいから付き合ってくれない」

わたしといて彬良くんがリフレッシュできるなら、すごく嬉しい。彼と旅行に行けることも、もちろん嬉しい。

「旅行かぁ、どこがいいかな」

「さすがに三日だから国内だな。倉敷とかどう?」

「倉敷って岡山だっけ。行ったことないけど彬良くんのおすすめなら間違いないなさそう」
自分の顔がほころんでるのがわかる。

じゃあ決まり、彼も白い歯をのぞかせる。

ふと手にしたミルクティーのカップに目を落とした。おしゃべりに夢中になって、表面にうっすら膜がはってシワが寄っている。
ぐっと一息に吸い上げたけど、カップの縁にへばりついてしまった。

気づいたらおおわれて、なかなか消えない。わたしの心に住む不安のように。
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