藤堂さん家の複雑な家庭の事情

始まり

「お姉ちゃん。あたし明日から放課後図書館に寄るから、いつもより帰るのが遅くなる。来週から期末テストが始まるの」

その、唐突にも思える藍子の言葉に、晩ご飯の後片付けをしていた心実は、食器を洗っていた手を止めた。


心実の心情からすれば、来たか――という感じだ。


それでも心実は「あっ、そ」とわざと素っ気ない返事をして、


「あんま遅くならないようにしなさいよ」

いつも言うような言葉を探し出して口にした。


既にもうこの時点で、妙な感じは始まっている。


いつもと同じようにしようと考え行動してる時点でおかしい。


それでも藍子はそのおかしさには気付かずに、「はーい」と返事をして座っていた食卓の椅子から立ち上がり、


「琢ちゃんとお風呂入ってくる。琢ちゃん行こう」

甥の琢を連れてリビングを出て行った。


リビングのドアが閉まる。


2人分の足音と楽しげな話し声が、徐々に遠くなり風呂場の向こうに消える。
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