藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「アレにさせればいいじゃん。惣一郎、明日早番なんだし」
心実は天井を指差しそう言うと、キッチンに足を向けた。
その心実の背中に、「でもさ」と言い掛けたトワの言葉を遮ったのは、
「ええ!? 明日、惣一郎君は一緒に行かないの!?」
琢の喚き。
琢の声の大きさに思わず足を止めて振り返り、「仕方ないでしょ」と言おうとした心実は、振り返った途端に言葉を失った。
てっきり心実は琢が紙袋を開けていると思っていたのに、実際は紙袋を引き千切っていたらしく、リビングの床には紙袋の切れ端が散乱している。
どう見ても途中からはわざと散らかした感が満載のその状況に、心実は息を吸い込むと「琢、何やってんの!」と怒鳴ろうとした。
――のだが。
「琢、一緒にゴミ片付けようか」
一呼吸先にトワがそう言って床の紙を拾い始めた所為で、言い掛けた言葉を無理矢理呑み込む事になり、少し噎せた。
心実の表情から怒鳴られると覚悟していた琢は、助け船を出してくれたトワの体に隠れるようにしてゴミを拾い始め、
「惣一郎君、明日一緒に行けないの?」
何もなかったかのように話を続ける。
心実は天井を指差しそう言うと、キッチンに足を向けた。
その心実の背中に、「でもさ」と言い掛けたトワの言葉を遮ったのは、
「ええ!? 明日、惣一郎君は一緒に行かないの!?」
琢の喚き。
琢の声の大きさに思わず足を止めて振り返り、「仕方ないでしょ」と言おうとした心実は、振り返った途端に言葉を失った。
てっきり心実は琢が紙袋を開けていると思っていたのに、実際は紙袋を引き千切っていたらしく、リビングの床には紙袋の切れ端が散乱している。
どう見ても途中からはわざと散らかした感が満載のその状況に、心実は息を吸い込むと「琢、何やってんの!」と怒鳴ろうとした。
――のだが。
「琢、一緒にゴミ片付けようか」
一呼吸先にトワがそう言って床の紙を拾い始めた所為で、言い掛けた言葉を無理矢理呑み込む事になり、少し噎せた。
心実の表情から怒鳴られると覚悟していた琢は、助け船を出してくれたトワの体に隠れるようにしてゴミを拾い始め、
「惣一郎君、明日一緒に行けないの?」
何もなかったかのように話を続ける。