藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「……何?」

トワが体を戻したと思った直後に目の前に差し出された小さな紙袋に、少々低い声を出した。


低い声になってしまったのは、紙袋に描いてあるロゴが明らかにブランド物だったからで、


「コレ、心実に」

「何で?」

誕生日でもないのにそんな物を差し出された事に戸惑ったからだった。


「琢の甚平買いに行った時たまたま見つけて、心実に似合いそうだと思ったから買ったってだけで意味はないよ」

意味がない時に買うようなブランドではないだろうと思う心実の気持ちを知ってか知らずか、


「本当は藍子ちゃんとお揃いの浴衣でもと思ったんだけど、どんなのがいいのか分からなかったから」

トワは言い訳をするようにそう言いながら、心実が受け取らない紙袋を心実の膝の上に置く。


お陰で心実の意思とは無関係に紙袋の中が見え、そこに入ってる箱の大きさとブランドの銘柄から、それがネックレスだという事が心実に分かった。


「……あたし」

「うん?」

「どうしたらいいの?」

「喜んでくれたら嬉しい」

言ってトワは車のエンジンを掛けた。
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