逃がすわけないだろ。
高校に入学して1週間経ったぐらいのこと、いつも一緒にいたはずの玲央が、ぱったり私の所に来なくなった。



どうしたんだろう。私何かしたのかな。

不安になった私は、昼休み玲央のクラスに行ってみることにした。



そして、昼休み。玲央のクラスに急いで向かった。



そこで見たのは、


「れーおくん。ご飯食べよ?今日もお弁当作って来たよ!愛情いっぱい込めたから沢山食べてね?」

「本当?嬉しいなぁ。愛美の弁当毎日食べられるなんて、僕、幸せ者だね。」


玲央が女の子といたところだった。




二人が良い雰囲気で話しているのを見て、

どうしようもなく胸が傷んだ。



無意識に、

大丈夫、まだ付き合ってるって決まった訳じゃない

と必死に自分に言い聞かせていた。


玲央に話しかければ、ちゃんと私のところに来てくれるはず。


そう何度も言い聞かせるように心の中で思いながら、私は玲央に話しかけようとした。


瞬間、

今の私が、一番聞きたくなかったことが聞こえた。


「ねー、見て見て。玲央くんと愛美ちゃん。すっごいラブラブだねー。」

「いいなー。あんなイケメンな彼氏。羨ましい!!」

「私も玲央くんのこと好きだったんだけどなー。」




私は固まった。頭が真っ白になった。



目の端で、玲央が女の子と教室を出ていこうとするのが見えた。




私は何とか冷静になりながら

いつの間にかカラカラに渇いていた喉から、

必死に声を絞り出して怜央の名前を呼んだ。




「玲央・・・。」




「ねー、玲央くん。私の料理好きー?」

「うん。好きだよ。」

「えー、じゃあ愛美のことは?」

「ふふ。ちゃんと愛美のことも好きだよ。」

「きゃー!嬉しい!私も大好きだよ!」





玲央は、私の隣を通り過ぎって行ってしまった。



私なんかに見向きもせず、まるでその子しか眼中に無いかのように。



私の小さな声は、誰にも拾われることは無かった。








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