続・マドンナブルー
 同性愛者であるという長尾の告白を導き出したことに、咲羅は多少の罪悪感を覚えた。しかし、そのことを隠して食事に何度も誘い、期待を持たせた彼の行為は許せない。それに、男性を好きなはずの彼が自分に近づく理由も分からなかった。

「同性愛者の長尾先生が、どうしていつも私を誘うんですか?女性に興味ないはずでしょう?」
「たしかに僕は男が好きです。だからって男をデートに誘えるわけないじゃないですか。そんなの気持ち悪いでしょう?だから、僕は普通の男を演じてました。普通の男に見えるように、自分を偽って今までも女性と付き合ってきました。あなたに気があるわけでもないのに、期待させてしまうようなことをして、本当にすみませんでした」
「そんな気持ちだったなんて、ひどい・・・・・・」
「本当に、申し訳ありません」

 長尾は深々と頭を下げ、反省しているようだったが、気持ちをもてあそばれた咲羅は、彼を許せそうになかった。

「本当にひどいです。私、少しは長尾先生にときめいていたんですよ。あなたが分からないです。どうして、私にあなたの恋人のふりをさせたんですか?津島さんが好きなんでしょう?」
「それは、あいつの近くにいたいからです。友達でいいからそばにいたいからです。自分がゲイであると知られたら、気持ち悪がられるに決まってます。あいつの近くにいるためには、普通の男でないといけないんです。女性が好きでないといけないんです。自分を偽ってまででも、あいつの近くにいたいんです」

 長尾は一息に話した後、羞恥で口をつぐんでしまった。

「気持ち悪いこと言ってすみません。門倉先生にはなんてお詫びをすればよいのか、本当にすみません」

 咲羅は彼が自分を利用した理由を聞き、怒りよりも彼を同情する気持ちが動いた。彼の気持ちに共感できた。報われない恋をしているのは、自分も同じである。来るはずのない人物からの音沙汰を期待し、一歩も進めないのだ。

「私、長尾先生の気持ち、よく分かります」

 申し訳なさそうにうつむいていた長尾が咲羅を見た。

「私も、報われない恋をしています。それも、九年もですよ。自分でも馬鹿みたいって思うけど、これってどうしようもないんですよね」
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