吐露するキズ跡
何言ってるんだろうな。初対面の人に。

でも、言いながら、ちょっと涙ぐんでる自分に気づく。

「相手のヒト来ちゃったから…退散してきたんだ。あたし、今、邪魔でしかないなって」

田村はチラリと、あたしがスカートなのを確認する。

「…仲良しだったんだ。寂しいよね、結婚されちゃうのって」

あたしは、顔を上げる。

「そーそー、そうなんだよー」

わかってくれる人がいたなんて。

「おまけに、知り合いいなくてぼっちだもんね」

ニマッっと笑って言われる。

うーん。なかなか意地が悪いヒトだぞ。

「ほんと、どうしようかな。始まるまでもそうだけど、披露宴始まっても、ヒマじゃんねえ」

素人目には、ドラムのセットが出来上がってるように見える。

そこから、手早くネジを閉めていきながら

「暇だね。ずっと演奏聴いてるしかないね。誰だっけ、タメナガさん?君は、誰の友達?トウゴ?クリュウ?」

何で選択肢に登場しないんだろう。

さっき、羽に頼んでメンバーを集めてもらったって言ったのに。

「…トウゴさん、と、ウキョウ君」

「ウキョウ…あいつ、女の子の友達なんかいたんだ」

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