吐露するキズ跡
「あ…今日は、よろしくお願いします。…って、ドラムのヒト…?」

「そうです。田村といいます」

イメージと違って、小柄なヒトだ。

痩せてるし。

何かドラマーなイメージとかけ離れてる。

「あたしが、…ウキョウ君にお願いして、今日のバンドのヒト集めてもらった首謀者で、為永って言います」

「ああ」

田村さんは、手を止めて、あたしを見る。

「それはそれは。なかなか楽しいことに呼んでもらってありがとう」

「楽しい…ですか。大変そう」

「大変だね。トウゴもクリュウもウキョウも、手伝いに来やしない」

「おかしいね。さっき一緒に来たのに。どこかで捕まってるんだよ」

クリュウのことはよく知らないけど、トウゴも羽も、手伝いを忘れたりサボったりするタイプじゃないと思う。

「手伝いましょうか?」

「…いい。自分でやる」

「…じゃあ、見ててもいいですか?」

作業中の彼の傍にしゃがみ込む。

「…暇なの?」

田村も作業のついでに座り込む。

「うん。トウゴさんとウキョウ君しか知り合いいないんだ。…主役は会社の先輩なんだけど、今挨拶してきたんだけど」
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