トシノサ恋 ~永久に…君に~
「…ち、違う…」

行かないで…

ギュッ…

私は、勢いよく立ち上がると彼の腕を掴んだ。

私が彼を掴むと、彼も私の手を握る。

「…嬉しいよ…本当に嬉しい…

でも、こんなの信じられなくて…

ずっとずっと…会いたかった…

でも忘れないといけないって

自分に言い聞かせてきて…

だけど…やっぱり無理で…私…

情けないくらい未練がましくて…。

絶対…もう会えないって…

思ってたから…」

涙が溢れだしてくる…

溢れだした涙が止まらない。

ポロポロポロポロ…

何で…泣いてるのよ…最悪…

「ごめん……見ないで…」

私が顔を背けようとすると彼は私の

顔を優しく包み込んだ。

そして、優しく私の名前を呼んだ。

「…紗和…」

彼の手が私の顔を優しく撫でる。

「…遅くなって…ごめん…

でも、もう離さないから…それでもいい?」

「……光くん…」

離さない…って言った?

「…紗和…」

彼が私の顔を優しくのぞき込む。

「…もう、生徒じゃないんだ…」

私がポツリと呟くと彼は私の髪をクシャッと

撫でて、私の大好きな笑顔を見せた。

「…もう、我慢しない。」

「…光くん…」

私が彼の顔を見上げてると

ゆっくりと近付いてくる…。

彼と三度目のキス…

私のオデコや頬を優しく触れるキス…

私の瞼にも優しく触れる…

「…紗和…大好きだよ…本当に」

彼が優しく耳元で囁く。

「…私も…大好き…」

私がそう言った瞬間…

彼が勢いよく私の唇を奪う。

「んっっ…ん、光…くん…っ」

その情熱的な勢いに圧されて

気が遠くなりそうになりながらも

私を強く求めてくる彼に応えようと、

何度もキスを重ねた。

ギュッ…

唇が離れた瞬間…

彼が私を強く抱き締め、光くんの匂いを

胸いっぱいに感じた。

ギュッ…っと私も、抱き締め返した。

「…紗和…可愛い…

ずっと…紗和とこうしたかった…」

そう言って彼は私の頭を昔のように優しく撫でる。

このままずっと…一緒にいられたら…

どんなにいいだろう…

そう思わずにはいられなかった。

彼が私を抱きしめると私もそのまま顔を埋めた。

ギューッッと何度もキツく抱きしめられ‥

その度に私も彼を抱きしめ返す。

頭の中で何度も何度も繰り返す‥

あなたが好き‥。

時間が過ぎるのも忘れしまうくらいに‥

沈黙を破るように‥光くんが話し出した。

「紗和ごめん…ずっと…ここじゃ…疲れるだろ?

俺も…家に行っていい?」

「あ…そうだね…っていうか今…何時?」

腕時計を見ると…

「えっ!7時過ぎてる?!!」

1時間以上も…抱きしめられてた‥…

慌てる私をクスリと笑っている光くんの

横顔が見えた。

その微笑みにドキッと胸が跳ね上がる。

昔みたいに光くんの綺麗な鼻筋が見えた。

…相変わらずキレイな顔してる…。

それに大人の色気が増してるし…。

さっき、抱き合った時…

細身なのに胸板と背中の筋肉がスゴくて…

ビックリした…。

…背も前より伸びたみたいだし…

すっかり大人の男性…

…私の知ってる光くんはもっと

少年ぽさが残ってて……

それなのに目の前の彼は…完璧で

思わず私なんかが隣にいていいのかなって…

考えたくないけど…気持ちが重くなる。

私…彼に愛される資格あるのかな?

そんな事を思いながらチラッと彼を盗み見ると

ドキン…

彼と目が合う…

その瞬間…彼が目を細める…

まるで、愛しい何かを見つけたように

嬉しそうに笑っていた。

そんな彼にドキドキしてるのを

悟られたくなくて必死に言葉を探した。

「そ、そういえば、恵くんと美桜ちゃんは元気?」

「うん…恵はもう高校卒業だし、美桜も中学生

で、めちゃくちゃ生意気だよ。

皆、元気にやってる…。」

光くんは、父親みたいな顔をしている。

そうだよね…

ずっと…頑張ってきたんだもんね。

「そっか…また、皆とご飯食べたいな…」

私は、高校生の光くんを懐かしく思い返していた。
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