ホテル御曹司が甘くてイジワルです

「清瀬さん……」
「話は終わったか?」
「はい、すごく貴重なお話をたくさん聞けて、勉強になりました」
「よかった」

おだやかに微笑まれ、きゅっと心臓が苦しくなった。





「ありがとうございました」と田端さんに頭を下げる。

「こちらこそ。今度『坂の上天球館』におじゃましますね」
「はい! お待ちしてます」

施設の見回りをして、施錠をしてから帰ると言う田端さんにもう一度頭をさげて、清瀬さんとふたり車へと向かう。

前を行く、背の高い後ろ姿。
彼はもっとさっそうと歩くイメージなのに、いつもよりもゆっくりと感じるのは、一緒にいる私の歩調に合わせてくれているからなんだろうか。

思い切って手を伸ばし、清瀬さんのスーツのすそを掴んだ。
突然後ろから服をつかまれ、清瀬さんが驚いたように足を止め、振り返る。

「あ、あの清瀬さん、ありがとうございましたっ」

なんだか照れくさくて、清瀬さんのスーツをきゅっと握りうつむいたまま口を開く。
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