ホテル御曹司が甘くてイジワルです




翌週の火曜日、私は清瀬さんの自宅でもあるプレアデスホテルのスイートルームにいた。


広いダイニングで綺麗なカップに注がれる紅茶を見ている。
目の前のテーブルの上には、美しくセットされたアフタヌーンティーがある。

上段のプレートには色とりどりのマカロンや新鮮なフルーツが乗ったタルトなどの可愛らしいプティフール。中段には小さなカップに入ったムースや数種のジャムが添えられたスコーン。そして一番下のプレートにはローストビーフやキャビアを使った贅沢な一口サイズのサンドイッチ。

「ごゆっくりどうぞ」

白い湯気をたてる紅茶を注ぎ終えたスタッフの男性が、恭しいお辞儀をして後ろにさがる。

「あ、ありがとうございます」

私がお礼を言うと微笑みを返してくれた。


身のこなしから受け答えまで驚くほどスマートなスタッフが部屋から出ていくのを見送って、ほぉーっと長い息を吐く。

こんな素敵なアフタヌーンティーをいただくのははじめてだ。
そう思いながらも、こんな広い部屋の中にひとりきりでは、ありがたみよりも寂しさが勝ってしまう。

今日は清瀬さんに『一緒に休日を過ごしてくれ』と言われ、ここのスイートルームへとやってきた。
けれど香港のホテルでトラブルがあったらしく、いつも余裕な清瀬さんがめずらしく焦った様子で「悪いが少しだけ待ってくれ」と言われてしまった。

清瀬さんは今、ドアの向こうにある書斎でお仕事中だ。
本社や香港とやりとりをしているんだろう。

こちらのスイートのリビングやダイニングはゲストを迎えるために使い、普段の執務は主に書斎を使っているらしい。

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