ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「もともとお礼をしたくて来たのに、私が邪魔で仕事が進まなかったらさらに借りを作っちゃうじゃないですか。なにかお手伝いすることないですか? 雑用でもお片付けでも、なんでもしますよ」
私がそう言うと、清瀬さんが笑った。
「真央の言葉はいつも上辺だけの社交辞令じゃなく、本心からそう思ってるのが伝わってくるな」
「当たり前です。清瀬さんに社交辞令を言っても仕方ないですし、このまま一方的に借りが増えていくよりも、こき使われた方がずっといいです」
胸を張る私にうなずいて、清瀬さんが「じゃあおいで」と私を立ち上がらせる。
リビングに面した扉を開くと、背の高い本棚の設置された書斎。
三人掛けのソファやセンターテーブルが置かれたプライベートなリビングスペース。その奥に寝室が見えた。
わずかに乱れたベッドに、無造作に置かれたスーツの上着。
清瀬さんはいつもあそこで寝ているんだ。そう思うだけでなぜか少し緊張してしまう。
慌てて目をそらすと、清瀬さんがソファの置いてある方を指さす。
「あそこにある本を、整理してもらってもいいか?」
美しく整然としていたメインのリビングとは違い、こちらは本や書類で溢れていた。
「わかりました。私が見ない方がいい書類はありますか?」
念のためたずねると「大丈夫だ」とうなずかれ、それなら思う存分整理してやろうと腕をまくる。