ホテル御曹司が甘くてイジワルです
だって、清瀬さんが私を好きだなんて。
一流企業の後継者で、仕事もできてかっこよくて。
ホテル界のプリンスなんて呼ばれる雲の上の存在の人が、私なんかを本気で好きになるはずがない。
そう思っているはずなのに、胸を打つ鼓動がはげしすぎて、脈に合わせて手が震える。
その震える手をぎこちなく動かし、服の上から自分の脇腹に触れた。
わずかにだけど不自然なおうとつのある自分の肌を、確認するようになぞり深呼吸をする。
そこにあるのは六年前、自分には恋愛は向いてないんだと思い知った深い傷。
だめだ。本気にしちゃ。
私はもう、恋をしないと決めたのに……。
「真央」
耳元で甘い声で名前を呼ばれ、背筋が溶けてしまうかと思った。
おずおずと横を見れば、至近距離で清瀬さんがこちらを見つめていた。
視線が合い、息をのむ。
清瀬さんが瞳の奥を覗き込んでくる。
ふたりの間の空気がぎゅっと濃密になり、時間が止まったように感じた。