ホテル御曹司が甘くてイジワルです


BGMはなく部屋の中は静かなのに、沈黙がちっとも気にならない。

なんでだろうと不思議に思って、窓の外から小鳥のさえずりや風が木々を揺らす音が聞こえてくるからだと気づく。
自然の音がこんなに心地いいなんて知らなかった。

すると、パラパラという音が聞こえてきた。落ちてきた雨粒が林の葉を叩く音だ。

「雨……」

私がつぶやくと、清瀬さんも外に目をやってうなずいた。

「降ってきたな」

陽は沈み、暗くなった林に次から次へと雨が落ちてくる。大きな窓ガラスも、あっという間に濡れて景色がにじんだ。

「この辺り最近雨が多かったから、あちこちで地盤が緩んでるみたいなんですよ。土砂崩れで道が封鎖されなきゃいいんですけど」

心配そうな表情で外を見ていた由美子さんが、そうつぶやいた。


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