ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

「夏目さん、よろしくね」

館長の言葉にうなずいて、私はほうきとちりとりを持って外に出た。

石造りの倉庫だった事務所は、入り口はガラス製の自動ドアに取り換えてあるけれど、そのほかの外観はほぼ作られた当時のままの状態だ。

赤く錆びた鉄製の鎧戸がついた窓に、百年雨風にさらされところどころ苔むした鈍色の石の壁。
歴史を感じさせる事務所の佇まいと、その奥に建つ白壁と丸い薄緑色の天井を持つレトロモダンな印象のプラネタリウムドームの対比がとても美しくて大好きだった。

自分の職場に少しの間見惚れてから、気持ちを切り替えてほうきを持つと、ちょうど下校途中の小学生と目が合った。

近くに住んでいる小学四年生の男の子、大輝くんだ。

ときどき家族でプラネタリウムを見に来てくれるし、こうやって学校帰りにプラネタリウムの前を通るから自然と顔なじみになった。

「こんにちはー!」

元気のいい挨拶をもらい、私も笑顔を返す。


 
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