ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「まいったなぁ……」
清瀬さんの婚約者が秘書の三木さんだということもショックだったけど、さらに衝撃をうけたのは私の傷のことを話していたことだった。
今清瀬さんに連絡すればそのことを責めてしまうそうな気がして、長期休暇をもらうことを言い出せないまま実家に帰ってきてしまった。
ちょうどいいから清瀬さんと距離を置いて少し頭を冷やそうと思ったのに、気が付けば清瀬さんのことばかり考えてる。
婚約者がいるのに私を好きだと言うなんて立派な裏切りなのに、どうしても彼を嫌いになれない。
これじゃあ、頭を冷やすどころか愛しさがつのる一方だ。
「なにがまいったの?」
小さな鏡を覗き込み軽く化粧をしていた母が、ちらりとこちらを見た。
「小さなころ、そこの窓のふちに座って星を見上げれば、どんないやなことも忘れられたのに」
そう言って寝っ転がったまま手を上げ、窓辺を指さす。
小さなころ私の部屋として使っていた、リビングから続く畳敷きの六畳間。
当時使っていた机も本棚ももうないけれど、天井に自分で貼った星型の蓄光シールが残っている。