ホテル御曹司が甘くてイジワルです

天気のいい日は窓の外を、曇りや雨の日は天井に貼ったお手製の星空を見上げて、いやなことを頭から追い出したのに。

「それなのに今は、星を見ても月を見ても山を見ても、寝転がって畳を見てたっておんなじ人のことばっかり考えてる」

スマホは充電器を持ってくるのを忘れて電源が落ちたままだけど、もしかしたら清瀬さんから連絡が入っているかも、なんて気になってしまう。

両手で顔を覆ってため息をついた私に、母はくすりと笑った。

「真央も、そんなふうに心から大好きと思える人ができたのね」

その優しい声色がなんだかくすぐったくて、畳の上でごろごろと寝返りを打ちながら母を見る。

「お母さんは、お父さんのこと心から好きだった?」

そう問いかけると「好きだったわよ」とあっけらかんとした答えが返ってきた。

あまりにすんなり言われて、ちょっと驚いてしまった。私の記憶の中の父は、いつも酔っていて乱暴な印象だったから。
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