ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「真央は機嫌の悪いお父さんのイメージしかないかもしれないけど、酔ってないときは優しい人だったのよ。少し心が弱い部分があって、それをうまく人にさらけ出せなくて、お酒を飲んで発散してたのねきっと」
私の考えを見透かしたように、母が鏡を見つめながら言う。
「あの頃お母さんは、お父さんにお酒を飲ませないようにすることばかり考えていたけど、そうじゃなくて、ちゃんとお父さんの気持ちをわかってあげようとしなきゃだめだったんだと思う。もっと寄り添ってたくさん話をしていれば、真央に怪我をさせることも、離婚をすることもなく、いい家族になれたかもしれないって思うわ」
「後悔してる?」
私が聞くと、母は視線を鏡からこちらに向けた。
そして真剣な表情でうなずく。
「たくさんしてる。お互いにもっと信頼して心を開けばよかったって」
母の言葉を聞きながら、ペンションで由美子さんと話したことを思い出す。
心をさらけ出すのは勇気がいるけど、信頼する相手となら分かり合える。由美子さんもそう言っていた。
母も由美子さんも、おなじことを私に教えてくれているんだと気づく。
「だから、真央は後悔しないように、頑張りなさい」
優しい声でそう言われ、じわりとまぶたの奥が熱くなった。