ホテル御曹司が甘くてイジワルです
でも頑張らなきゃ、とお米を抱えなおしていると、背後からチリンチリンと音が聞こえた。
自転車が通るんだなと、端にずれて道を譲ろうとする。けれど後ろから来た自転車は私を追い抜かすことなく隣に並んだ。
「こんにちは、真央ちゃん」
そう挨拶をされ、目を見開いた。
「あ……!」
眼鏡をかけた優しい笑顔。柔らかくおだやかな声。
六年ぶりの再会なのに、まったく変わっていない彼のことをすぐに思い出せた。
大学時代付き合っていた、男の子。五藤くんだ。
「え、どうして五藤くんが?」
彼は大学で一緒になったけど、地元はこの町じゃないはずだ。
「今ここの中学校で教員をしてるんだ。もともと同じ管内の違う学校にいたんだけどこの春から赴任になって。真央ちゃんの地元だってことはわかってたんだけど、まさか会えるとは思わなかった」
「そうなんだ。びっくりした……」