ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「ではお食事中に失礼しました」
優雅なお辞儀をしてから出て行った遠山さん。ぱたりと絞められたドアを眺め、清瀬さんが顔をしかめた。
「近いうちこことは別に部屋を借りることにする」
「え? どうしてですか」
オーベルジュのオープンも近いし、そろそろ本社に戻るんだろうか。
そうなったら、せっかく気持ちが通じ合ったのに遠距離になってなかなか会えなくなってしまう。
私が坂の上天球館で働いているかぎり、日本はおろか世界中で仕事をする彼にはついていくことはできないし……。
なんて私は不安になったのに、清瀬さんはまったく違うことを考えているようだ。
「真央のすっぴんを、遠山に見られた」
「すっぴん……?」
彼の舌打ちに目を丸くする。
「こうやって不意打ちでやってきた遠山に、真央の無防備な姿を見せたくない」
不機嫌そうな清瀬さんに、不思議に思いながら自分の姿を見下ろす。
清瀬さんの膝の上に抱き上げられていることばかりを気にしていたけど、自分の格好に気づいて一気に頬が熱くなった。
目覚めてからバスルームに運ばれ全身隅々まで清瀬さんに洗ってもらい、今はメイクもせずにバスローブを羽織っただけの姿だ。
バスローブ姿で膝の上に抱き上げられて食事を食べさせられているって……、いったいどれだけ甘やかされているんだ。
ものすごい羞恥心が押し寄せて、私は顔を覆って悲鳴を上げた。