ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「わぁ、素敵な場所ですね」
可愛らしい声が天井の高い事務所内に響く。
「ありがとうございます」
館長も私も、にこにこしながらやってきたふたりにうなずいた。
内装工事をほぼ終えた坂の上天球館。
今日はオーベルジュのオープンイベントに合わせて行われる、プラネタリウムドーム内での模擬挙式の打ち合わせの日だった。
たくさんの希望者の中から模擬挙式に協力してくれることになったのは、入籍したばかりだという二十代前半の可愛らしいカップルだ。
「遠いところ、ようこそいらっしゃいました」
そう言ってふたりにコーヒーを出すのは由美子さん。
オーベルジュのシェフを務めることになった寺沢さんは、それまで営んでいたペンションをやめてこの近くへと引っ越してきた。
日中の時間を持て余した由美子さんが、『坂の上天球館』で働いてくれることになったのだ。