ホテル御曹司が甘くてイジワルです
結婚前は会計事務所で働き、結婚後はペンションを経営していた由美子さんは、星の知識こそないものの、事務仕事も接客も完璧で、デスクワークが苦手な館長と私が後回しにしていた仕事を猛然と片付けてしまった、頼もしすぎる仲間だ。
そしてソファに座るのは新郎の山口康介さんと新婦の星奈さん。
新婦の名前に星がつくこともあり、星空やプラネタリウムが大好きだという。
ふたりのなれそめや趣味を聞きながら、当日どういう星空をドームに投影しようか打ち合わせをしていく。
「もしよかったら、春の星空を映してもらってもいいですか?」
星奈さんの言葉に、館長が「もちろん大丈夫ですよ」とうなずく。
「母が、おとめ座のスピカが大好きだったらしいんです」
「お母様も星がお好きなんですね。模擬挙式には参加されるんですか?」
なにげなく聞くと、星奈さんは首を横に振った。
「母はもう亡くなっているので」
「そうでしたか……。それは失礼いたしました」
「いえ、もう何年も前のことなので」
慌てて頭を下げた館長に、星奈さんがふわりと笑ってくれる。