ホテル御曹司が甘くてイジワルです

「母はもともと体が弱かったらしくて、私を生んですぐに。でも、母の大好きだったこの場所で結婚式をすることができてとても嬉しいんです」

その言葉に、不思議に思って顔を上げた。ちらりと隣に座る館長を見ると、彼は目を丸くしていた。

「母は中学生の頃までこの辺りに住んでいたらしくて。いつもこの坂の上天球館で星を眺めていたって、祖母が教えてくれました。病気がちで休んでばかりいたせいか学校には居場所がなくて、家に閉じこもっていると息が詰まるのかふさぎこんで、でもここで星を見上げているときだけは、本当に生き生きとしていたって」

それってもしかして、以前館長が言っていた女の子なんじゃ……。

星奈さんの言葉に、館長が口元を手で覆った。

「君は、あの女の子の娘さんなんだね……」
「母を覚えているんですか?」

声を震わせた館長に、星奈さんが目を輝かせた。

「よく覚えているよ。本当に星が大好きで、可愛らしい女の子だった」
「わぁ! よかったら、ぜひ母の話を聞きたいです!」
「もちろん。よろこんでお話しするよ」

そんなふたりのやりとりを見守りながら、そっと胸に手を当てた。

三十年前、ここを大好きだと言ってくれていた女の子の娘さんが、坂の上天球館で式をあげてくれるなんて。
奇跡のような素敵なめぐりあわせに、胸がいっぱいになった。


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